大工の振動病(はくろう病)労災認定事例|一人親方として37年間働いたKさんが振動病として労災認定

大工として長年働き、手のしびれや痛み、指の変形などの症状に悩んでいたKさん。

検査の結果、振動病と診断され、労災請求を行った結果、労災認定を受けました。

Kさんは、長年にわたって大工として働き、電動ハンマーやインパクトドリルなど、さまざまな振動工具を使用していました。

また、Kさんは会社に雇われる労働者ではなく、一人親方として1986年11月〜2024年3月まで仕事をしていました。

Kさんの仕事歴

Kさんは中学校を卒業した後、大工としてさまざまな会社で勤務しました。

その後、独立して一人親方となり、1986年から2024年まで約37年間、大工として仕事を続けていました。

大工の仕事では、電動ハンマーやインパクトドリルなど、手に強い振動が伝わる工具を長時間使用することがありました。

Kさんも長年にわたり、こうした振動工具を使用して仕事をしていました。

手のしびれや痛み、指の変形

長年仕事を続ける中で、Kさんには次第に指のしびれや手の痛みなどの症状が現れるようになりました。

さらに、Kさんの場合は指の関節の変形が顕著に見られました。

Kさんの変形した小指(鷲手)

振動病というと、「指が白くなる白ろう現象(レイノー現象)」を思い浮かべる人もいるかもしれません。

しかし、振動病によって現れる症状はそれだけではありません。

手や指のしびれなどの末梢神経の障害や、筋肉・骨・関節などの運動器の障害が現れることもあります。

厚生労働省も、振動障害について、手や指などのしびれ、冷え、こわばり、レイノー現象などのほか、筋肉・骨・関節などの障害が生じることを示しています。

「年齢のせい」と思っていた手の症状

大工として長年働いていると、手の痛みや指の変形があっても、「長年仕事をしてきたから仕方がない」「年齢のせいだろう」と考えてしまうことがあります。

しかし、長年にわたって振動工具を使用してきた場合には、振動病が原因となっている可能性もあります。

Kさんも、手や指の症状について建交労に相談しました。

その後、検査を受けたところ、振動病と診断されました。

一人親方でも労災保険を使える場合があります

Kさんは一人親方として仕事をしていました。

一人親方は、一般的な会社員のように会社の労災保険に入っているわけではありませんがKさんは、一人親方の労災保険の特別加入をしていました。

このため、Kさんは一人親方として働いていた期間についても、労災保険を利用して請求することができました。

一人親方は「特別加入」を検討しましょう

一人親方は、原則として通常の労災保険の「労働者」には含まれません。

そのため、一人親方として仕事をしている場合、労災保険の特別加入をしていなければ、仕事中のケガや職業病について通常の労災保険給付を受けられない場合があります。

建設業などで一人親方として働いている方にとって、労災保険の特別加入は、自分自身を守るための重要な制度です。

「一人親方だから労災は使えない」と考えるのではなく、仕事を続ける前に、労災保険の特別加入について確認しておくことが大切です。

Kさんの場合も、特別加入をしていたことによって、振動病について労災請求を行うことができました。

名古屋南労働基準監督署へ労災請求

振動病と診断されたKさんは、建交労とともに労災請求の手続きを進め、名古屋南労働基準監督署に労災請求を行いました。

振動病の労災認定では、単に現在の症状だけを見るのではなく、これまでどのような仕事をしてきたのか、どのような振動工具を使用していたのか、どのくらいの期間・時間使用していたのかなど、仕事による振動ばく露の状況が重要になります。

また、振動工具を使用した時間だけでなく、寒冷な環境での作業など、作業環境も関係します。

Kさんについても、長年にわたる大工としての仕事や振動工具の使用状況の確認を行い、総振動工具使用時間は20,000時間を超えました。

最終的に振動病として労災認定を受けることができました。

大工にも振動病(はくろう病)のリスクがあります

振動病というと、チェーンソーを使う林業労働者などを思い浮かべる方もいるかもしれません。

しかし、振動工具は建設業でも数多く使用されています。

大工の仕事でも、電動ハンマーやインパクトドリルなど、手に振動が伝わる工具を長期間使用することがあります。(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc0353&dataType=1&pageNo=1)

そのため、「大工だから振動病にはならない」ということではありません。

長年にわたって振動工具を使用してきて、手や指のしびれ、痛み、冷え、指の変形などの症状がある場合には、一度、振動病の可能性について調べてみることをおすすめします。

「仕方がない」と諦める前に

Kさんのように、長年大工として働いてきた一人親方でも、振動工具による職業病として振動病が認められる場合があります。

特に一人親方の場合、仕事を辞めてしまった後では、過去の仕事について資料を集めたり、使用していた工具や作業内容を整理したりすることが難しくなることがあります。

「昔から手が痛いから年齢のせいだろう」

「指が曲がっているけど、大工をしていたから仕方がない」

「一人親方だから労災は使えない」

そう思って諦める前に、まずは専門家に相談してください。

建交労では、これまでの仕事の内容や使用していた振動工具、症状などを確認し、労災請求についての相談を受けています。

一人親方として働いている方も、労災保険の特別加入について確認しておくことが大切です。

手や指の症状でお悩みの方、長年振動工具を使用してきた方は、建交労労災職業病相談センターまでご相談ください。